
name : y-house
place : Awaji, Hyogo
本計画は、高野山真言宗 成楽寺の境内の裏庭にご住職の住まいを作る計画である。江戸時代に建築された本堂、その後に増築された庫裡など、境内には時代を超えて様々な歴史的建築物が建築されている。寺院の伽藍配置や宮大工の装飾意匠などが境内全体の場所を象徴しており、それらの総体が権威的な場を形成している。このような歴史的背景の強度がある場所において、在来工法の新築住宅の建築が要件であった。
本計画では、寺院が表象する歴史的な象徴性に対して、形態的象徴性のある建築をつくることを提案した。境内という歴史性、場所性に別の価値軸で対峙できる強度のある形態の可能性を模索した。
本計画の敷地内には、御神木のような一本の樹木があった。樹齢は本堂に匹敵するほど経過しており、施主の幼い頃からの記憶にもある樹木で、境内において重要な存在であった。今後、倒木の可能性もあったため、伐採することを前提として計画が進められたが、この樹木が脈々と受け継いできた時間を住宅のなかに内包させることを提案した。樹木の正面に立方体を配置し、樹木に対して凹の形を象った。910グリッドに合わせて平面形状をデフォルメし、高さ方向も居住空間に適切な寸法に調整し、建築に必要な軒を出した。立法体という完全な形の幾何学から最小限の建築的操作によって全体を設計した。











